人間の正体
4日目からヴィパッサナー瞑想に入る。
ブッダが悟りを開いたのはこの瞑想法であり、アーナーパーナ瞑想で得た集中力が土台となる。目を瞑って小さな丸い点をイメージし、頭のてっぺんから足の爪先まで、からだの全ての感覚を順に追って観察していく。
爽快、不快、痛み、痺れ、脈動、収縮などあらゆる感覚を感じる。感覚の原因を探るのではなく、焦点を合わせたところにある感覚に気づくということだ。
はじめは強い感覚しか気づけないが、何度も全身に意識を巡らせていくと、弱い感覚も感じとれるようになる。
集中して瞑想を続けていくと、からだの部位ごとに、さまざまな感覚が起こっていることに気づく。微かな感覚が生まれ、やがて消えていく。今までに感じたことのない不思議な感覚だ。さらに瞑想を続けていくと、その感覚の質が変化の段階に入るらしい。全身に均一で微細な感覚があらわれ、それがものすごいスピードで生まれては消えていく。連続的な波動のような流れ。この感覚の正体とは?
ブッダは、人間が5つのプロセス(過程)から構成されていることを悟った。
1つはからだのプロセスであり、4つは心のプロセスであるという。
からだは原子よりも小さな微粒子でできており、一個の微粒子の寿命は一兆分の一秒よりも短いという。微粒子は絶え間なく生まれ、死んでいく。
心の4つのプロセスは意識、知覚、感覚、反応だという。
・意識はアンテナの役割で、何かが起こったことを感じとる。
・知覚は意識がとらえたものを読みとる。
・感覚は意識から知覚したものを識別し、好き嫌い、快、不快を決める。
・そして反応が起こり、行動に移る。
5つの感覚器官である、目、耳、皮膚、舌、鼻で感じたことは必ず、意識→知覚→感覚→反応という順でプロセスを通過する。
この4つの心の働きは、物質を作る微粒子よりスピードが早く、あまりにも速く通過するため、ある反応が何度も繰り返されて強化された時でなければ、人はそのことに気がつかないという。
自分という人間の正体は、生まれては消える5つのプロセスの集合体であり、ただ現象のみが起こり続けているにすぎない。自分が果てしなく変化する無常の存在だと理解した時、自分への執着がなくなり、苦しみは消えて心は自由になる。