ミャンマーの中央部にある第2の都市マンダレーから南へ約11km、古都アマラプラの東の郊外にある、タウンタマン湖をまたいで架かる全長1.2kmのウーベイン橋。
この橋は、1849年に王都をインワからアマラプラに移す際に、バガン王の命令により使われない旧王宮のチーク材を使ってつくられた、世界最長の木造の歩道橋。
ギネスブックには、静岡県島田市の大井川にかかる蓬莱橋が全長897.4mで、1997年に「世界一長い木造歩道橋」として認定されていますが、実際はウーベイン橋の方が最長になります。
災害によって何度も修復を重ねながら、人々の生活に欠かせない橋であり、休憩できる屋根付きの場所が途中に何カ所かあります。即席の売店で飲み物を買って、風景を眺めるには最適です。
写真は乾季に訪れているので、緑が生い茂っていますが、雨季になると橋の下一面が水浸しになります。
ウーベイン橋の下で、撮影する光景と出会いました。
照明が定常光なので動画の撮影と思いましたが、カメラマンのカメラにクリップオンストロボを装着しているので写真撮影です。モデル、撮影班はみんな若いので学生かな?
写真集に挿入するイメージカットを撮影しようと思い、ウーベイン橋と夕日を狙うと、橋の向こうに仏塔があることに気がつきました(写真右下の橋と重なって見える仏塔)
Pyi Lone San Dat Paung Su Pagoda(Googleマップ参照)
ガイドブックには載っていなくて、偶然に見つけた仏塔です。
僕にとって、ウーベイン橋よりも仏塔の方が重要。駆け足で仏塔に向かいました。
仏塔の形は現代的で、モスクワの味として知られたパルナスのケーキのようでかわいい。建物の作りからわりと新しい仏塔だと思います。
ほとけの乙女は、「太陽の光に照らされた遺跡を背景に祈る少女」がテーマですが、この仏塔はちょうど今の時間、太陽が沈む夕日を狙いました。
仏塔のみを写真に撮影するのではなく、そこへ偶然、仏教徒の少女が現れる必要があります。
ほとけの乙女は現れるのだろうか。。
少女を待っている間にも太陽はどんどん西へ沈んでいきます。
もう今日はダメかなと思っていると、そこへ1組の家族がやってきました。
家族の輪の中にひとりの少女の姿。年齢は小学校低学年くらいで、ボブカットの髪型に華やかな衣装とメイク。それでいて落ち着いた雰囲気。ロシア風のケーキのような異国情緒が漂う仏塔のイメージにピッタリの少女です。
いつものような親御さんに、仏教をテーマに写真を撮影している写真家と名乗り、すぐにOKの承諾をいただきました。
いざカメラを構えると、仏塔は湖のほとりにあり、後ろに下がれない立地。仏塔と少女との距離がとれないため、構図のバランスがとれません。
この仏塔は望遠レンズを生かした撮り方なら、少女とのバランスがとれたかもしれませんが、ほとけの乙女はすべて16mm(フルサイズ換算)の超広角レンズで撮影しているので、それができません。
偶然に見つけた仏塔だったため、ロケハンができず、もうすぐ陽は完全に沈みます。万事休すか。。
周囲が暗くて気づかなかったのですが、パルナスケーキ仏塔をよく観察すると、まるで従者を従えるように、小さな仏塔が繋がっています。
しかも背景には夕日!!
パルナスのケーキ仏塔にこだわらず、このミニマムな仏塔も少女には似合うと思いました。
そして少女は仏塔の前に立ち、静かに手を合わせて祈りました。
少女にカメラを向けると、あたふたとして焦っていた気持ちも落ち着き、時が止まったような感覚がありました。それは、ほとけの乙女である少女の持つ空気感によって、周囲に影響を及ぼしているんだと思います。
撮影した時間は1分ほどだと思いますが、この感覚が僕の作品制作の原動力になっています。
この仏塔は僕がこれまで撮影した中で、もっとも小さな仏塔になります。
結局、ウーベイン橋のイメージカットは、仏塔がはっきりと見えないため写真集には採用せず、エピソードも掲載しなかったので、撮影のエピソードとしてブログに掲載しました。